《仮面城(日文版)》第36章


「手がまわったぞ。道之助、逃げろ、逃げろ!」
という、ただならぬ叫び声が聞こえてきたかと思うと、それにつづいて、
「道之助、おまえを逮捕する。神妙にしろ!」
というどなり声とともに、ピリピリとやみをつんざく呼び子の音。さあたいへんだ。これを聞いた観客が、いちどにワッとそう立ちになったからたまらない。場内は上を下への大そうどうになった。
「なんでもない。しずかに、おしずかにねがいます」
「電気をつけろ。電気だ電気だ!」
「キャⅳ俊⒅堡皮ā¥栅撙膜证丹欷毪Γ ?br /> と、悲鳴やどなり声がいりまじって、いやもうイモを洗うような大混雑。そのなかにあって、例の幽霊花火は、しばらくじっと下のようすをうかがっていたが、やがてヒラリとブランコから飛んだとみると、スルスルとやみの空中をはっていく。どうやら丸てんじょうにはられた綱のひとつに飛びついたのである。
「それ、逃げるぞ。ゆだんするな」
警官らしい足音が、闇のなかを行ったりきたりする。せめて電気でもつけばよいのだが、こしょうでも起こったのか、いつまでたってもあたりはまっ暗。その中を幽霊花火は、スルスルと空中をぬって三階へとびおりると、ガラス窓をけって、さっとそとへとび出した。
あとには美罚ё婴埭Δ激螭攘ⅳ沥工螭扦い搿?br />
幽霊花火の正体
その夜、浅草蔵前を通りかかったひとびとは、前代未聞の大捕物に血をわかしたのである。
夜空にそびえる国技館の大ド啶椤⒁护郡蓼辘喂猡斡瘠趣映訾筏郡人激Δ取ⅴ单盲热思窑挝莞摔趣婴辍ⅴ庭亥呋ɑ黏韦瑜Δ恕⑽莞槲莞丐趣长恧菠皮い盲郡椁丹ⅳ郡い丐蟆8督摔悉浃袱Δ蓼盲筏辘趣ⅳ膜蓼盲啤?br /> 「やあ、あそこへ出てきたぞ。ほら、かどのタバコ屋の屋根の上だ」
「あ、あっちへ逃げるぞ。川のほうへいくぞ」
「気をつけろ。とびおりるかもしれないぞ」
と、まるでネズミでも追いまわすようなさわぎだ。
やがて警官の一行が屋上にすがたをあらわしたが、なにしろ相手は本職の少年曲芸師、屋上の鬼ごっこではとてもかなうはずがない。道之助は川を目ざして逃げていったが、そのうちに追っ手の数はしだいに増していく。
警官にまじって、やじうまが四方八方からひしひしとつめよせてくるのだ。つごうの悪いことには、道之助は全身から、あの青白い燐光をはなっているのだから、かくれるにもかくれることができない。ようやく川ぞいの家まで逃げのびたものの、見れば、周囲にはひしひしと追っ手がせまっている。
絶体絶命! 道之助は絶望的な目つきであたりを見まわしたが、ふいに身をひるがえすと、そばにあった浴場の煙突にスルスルと登り出したから、ハッと、一同かたずをのんでながめているうちに、地上何十メ去毪趣い熗护紊稀ⅳ瑜Δ浃饯韦皮盲冥螭摔郡嗓辘膜い康乐稀ⅴⅴ盲趣い﹂gもない。サア盲冉鹕昔椁颏窑い朴缣锎à丐趣婴长螭馈?br /> 「あれ、川のなかへとびこんだぞ」
両河岸から、橋の上に鈴なりになったやじうまが、ワイワイとかけよってのぞいてみると、暗い水のなかに銀鳎Г颏窑椁幛筏胜橛兢い扦い康乐稀ⅳ浃埔护饯Δ违猢‘タ堠‘トに泳ぎつくと、ヒラリとそれにとびのって、ダダダダダダと、エンジンの音も勇ましく、波をけたてて下流のほうへまっしぐらに――それと見るなり追っ手の警官たちも、付近にあったモ咯‘ボ趣颏辘ⅳ膜帷ⅳ郡坤沥摔饯韦ⅳ趣蜃筏盲堡郡ⅳ悉郡筏剖孜菠瑜⒌乐颏趣椁à毪长趣扦郡嗓ΔD―。
それはしばらくおあずかりとしておいて、こちらはふたたび、国技館の三階である。
道之助が窓から外へとび出していったあとで、俊助はむらがる見物をかきわけて、美罚ё婴韦饯肖丐堡瑜盲郡⒁姢毪缺伺稀⒔瘠摔鈿萁~しそうにまっ青になっている。
「しっかりなさい、お嬢さん。あいつ、もう逃げてしまいましたよ」
「まあ、どうもありがとう」
「とにかく、出ましょう。ぼくは決してあやしいものじゃない。安心してつかまっていらっしゃい」
と、俊助が美罚ё婴颏à啤⒐拣^から表へ出て見ると、あの捕物さわぎもおさまって、やじうまもあらかた散ってしまったあとだった。
「おじさま、どうもありがとう。おかげで助かったわ。あたし、ほんとにどうしようかと思ったの」
「なあに、そんなこと。それよりお嬢さんは、あの少年を知ってるの?」
「いいえ」
と美罚ё婴稀ⅳ长趣肖工胜四郡颏栅护搿?br /> 俊助はここで、さっきチラと小耳にはさんだことばを、切り出して見ようかと思ったが、いやいやそんなことをすれば、相手に用心させるばかりだ。それよりここはしんぼうして、せめて相手の住所と名まえでも聞いておいた方がいいと、早くも心をきめると、
「そうですか。ときにお宅はどちら? ひとりで帰れますか? なんなら、送ってあげようか」
「いいえ、だいじょうぶよ。おじさま、むこうに自動車をまたしてあるのよ」
「ああ、そう。では、そこまでいっしょに……しかし、さっき、つれのひとがいたようだが、待たなくてもいいの?」
「ええ、いいんです。どうせ心配なんかしやしない。あのひと、おとうさまの助手で|志《し》|岐《き》|英《えい》|三《ぞう》さんというんです」
と、問わずがたりに話す名まえを、俊助は心のなかに記憶しながら、
「ははあ、そしておとうさまというのは?」
「|宗《むな》|像《かた》|禎《てい》|輔《すけ》といいます」
「ああ、それじゃ、あの、大学の――」
と俊助がおもわずそう聞きかえしたとき、
「ありがとう、おじさま。ここまで送っていただけばもういいわ」
と美罚ё婴陷Xくおじぎをして、道ばたに待たせてあった自動車にとびのった。
夜のやみをついて走る自動車のあとを見送った三津木俊助は、なんとなく、今夜のできごとが気になってならなかったのだ。
宗像禎輔といえばひとも知る有名な大学教授。その有名な博士と、あのサ工紊倌辘趣韦ⅳい坤恕ⅳい盲郡い嗓韦瑜Δ书v係があるのだろう。さっきチラと小耳にはさんだ会話によると、宗像博士の書斎には、道之助によく似た写真がかざってあるらしいのである。
――なににしてもふしぎな話だが、それにしても道之助とはいったい何者だろう。さっきの捕物さわぎはどういうわけだろう。そうだ。それからまずたしかめておかねばならない。
と、そこでもう一度国技館へとってかえした俊助は、だしぬけにポンとうしろから肩をたたかれて、あっとおどろいた。
「ああ、あなたは由利先生」
「三津木君、いいところで会ったね。じつはさっき、君の社へ電話をかけたのだがね」
と、ニコニコ笑っているのは、白髪で見るからに子供っぽい顔をした紳士である。
いったいこの紳士は何者かというと、これこそ由利先生といって世間でだれ知らぬ者はない名探偵、そして新聞記者の三津木俊助とは師弟もただならぬあいだがらなのである。
「じつはね、|等《と》|々《ど》|力《ろき》警部から電話があって、かけつけてきたのだよ」
等々力警部というのは、警視庁きっての腕利きだが、これまた由利先生の弟子にあたる。
「すると先生は、こんやのこの捕物を、あらかじめごぞんじだったのですね」
「ふむ、知っていたよ。だからきみにも知らせてやろうと思って電話をかけたのだ」
「それで、栗生道之助とは何者ですか」
俊助はおもわず声をはずませた。
「じつはね、三津木君。このことはまだないしょだが、きょう警視庁の等々力警部のもとへ無名の投書がまいこんでね。それではじめてわかったのだが、道之助こそいま
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