《好き≠恋(日文版)》第34章


木の下にあるベンチへツバサが腰掛けた。ちょうど日陰になっていて、吹いてくる風はとても気持ちいい。健人もベンチに腰掛けて、背もたれに体を預ける。こうして、落ち着いて座るのはとても久しぶりのことだったように思う。リビングにいても、部屋に居ても、ずっと緊張して落ち着けなかった。ここに来てようやく落ち着けたことで、健人は大きく息を吐き出した。それと一緒に、もやもやと考えていたことまで、吐息と一緒に消えようとしていた。
「……この前は、ありがとう」
自然とそんなことを口走ってしまい、健人も少し驚いた。ツバサはきょとんとした顔で健人を見てから、「何のことだ?」と尋ねる。先ほど、倒れかけた話をしたというのに、助けてくれたことは忘れてしまっているようだった。
「倒れかけたとき、助けてくれたから。飲み物ももらったし」
「あぁ、あれか。気にしなくていい。飲み物だって、部室から取ってきたやつだから、タダだし」
「……でも、部で使う奴をもらったんだ。さすがに……」
「あんなもん、何十本も置いてあるんだ。1本ぐらいパクったって、バレやしない。もう飲んだんだろ? 気にしたって仕方ない」
はっきりと言われて、健人は黙った。確かにツバサの言うとおりだった。こうして、思ったことをズバズバと言ってくれるツバサは、話しやすいと思った。逆に歩は、考えていることを口に出さないから、何を思っているのか分からない。だから、知らない間に地雷を踏んでしまい、険悪になってしまうのだ。けれど、それは歩だけではない。健人も考えていることを話さないから、歩には気持ちが伝わっていなかった。
それから、すれ摺いk生している。
「変なところを気にするんだな、お前は」
「……いや、礼だけは言いたかったんだ。助かったのは、事実だし」
健人は顔を上げて、ツバサにそう言った。ツバサは真面目にそういう健人を少しの間見つめ、プッと噴出すように笑った。数秒間、声を上げて笑い、目に涙を浮かべながら健人を見た。
「見た目どおり、真面目だな」
それがバカにされたと感じた健人は、ムッとする。助かったから礼を言っただけなのに、バカにまでされることはない。そんな表情を見せると、またツボにはまったようでツバサは笑い始めた。学校にいるときは、寝ているだけの姿しか見たことが無いので、こんなにも感情豊かだったとは知らなかった。
「悪い悪い。良い意味で言ったつもりなんだ。そんな風に礼を言われることは滅多にないから……」
ふと見せた寂しそうな表情に、健人は目を見張った。そんな顔も一瞬にして消え、ツバサは空を仰ぐ。ん姢瑩eれて、白い肌が露になった。屋内競技をやっているせいか、肌はとても白い。透き通るような肌に見入っていると、「……あっついなぁ」と呟くような声が聞こえた。
「……え?」
「佐偅虾韦颏筏皮郡螭溃俊?br /> 目を向けられ、健人は「買い物に行こうとしてたんだ」と素直に答える。苗字といえど、名前を呼ばれるのは初めてで少しドキッとした。
「買い物? こんな時間に?」
「……家にいても退屈だったから。夕飯の食材も足りなさそうだったし」
「あぁ、買い物って夕飯のか。てっきり、服とかそんなのを買いに行くのかと思ってた。って言うか、何でお前が夕飯の買い物とかに行くの?」
ストレ趣蕟枻い堡恕⒔∪摔稀竵I親が旅行に行ってるんだ」と答えてしまう。なぜか、ツバサの前では、素直に言葉が出る。こうして座りながら話していることも、苦ではなかった。
「……へぇ、じゃぁ、今はあの煩いのと二人きりか?」
「そうだな」
一瞬、ツバサから表情が消えたのを健人は見逃さなかった。すぐに健人から目を逸らし、顔を反対側に向ける。煩いのと言い、名前で呼ばないのを見ると、ツバサはあまり健人のことが好きではないようだ。出席番号順に座っていたとき、毎日と言うほど話しかけられ、寝ているのを邪魔されているのだ。嫌っていても仕方ないと思った。
「名前は……、なんて言うんだ?」
いきなり問いかけられた言葉に、健人は反応できなかった。名前を尋ねられていることは分かっているが、まさか、自分の名前を聞かれているとは思わなかった。
「……え?」
「お前達、二人の名前」
「……俺が健人で、煩いのが歩」
「ちっさいほうが健人か。ん、覚えた」
小さいと言われて反論しようと思ったが、こうもマイペ工坤确凑摛工霘荬馐Г护皮筏蓼ぁ⒔∪摔虾韦庋预铯氦衰磨啸丹蛞姢俊N锲啶蕙ぅ讴‘スだけれど、嫌味がなくて、思ったことをすぐ口に出してくれるから一緒に居て楽だった。
「俺のことはツバサでいい。俺もお前のこと、健人って呼ぶし」
「……は!?」
「なんか、健人と一緒にいると、落ち着く。煩くないし」
そう言われて、少しだけ嬉しくなった。けれども、その言葉に喜びきれず、健人は俯いてしまった。誰かからこうして、一緒にいると落ち着くなんて言われたことは無かった。だから、喜ばしいけれど、それを言ってほしい相手はツバサではない。脳裏に、歩の顔がよぎった。
「健人!」
遠くから名前を呼ぶ声がして、二人は一斉に振り向く。公園の入り口には歩が立っていて、早歩きでこちらに近づいてくる。その顔は少し怒っているようで、健人は目を逸らす。どうして、ここまで来たんだろうか。理由は分からない。この前と同じように遅いから気になって様子でも見に来たんだろうか。優しくしてくれればしてくれるほど、苦しくなっていくのが分かった。
「あれ、一緒に居たの林だったんだ」
「……俺がいたら、悪かったのかよ」
「いや?」
歩はにこにこと笑いながら、目の前までやってくる。ちょうど、健人とツバサの間に立って、二人に目を向ける。黙ったまま、何も言わずに、数分が経過した。ジリジリと蝉の鳴き声だけが、この空間での音だった。
「え盲取ⅳⅳ盲欤俊·胜螭⑿澳Г筏浚俊?br /> 気まずくなった歩が二人にそう言うが、健人もツバサも答えなかった。邪魔をしたわけではないが、なんとなく歩がいると気まずい。健人は歩を見上げてから、そっと目を逸らした。
「……あのさ」
健人の隣にいたツバサが少し不機嫌そうに歩へ話しかける。先ほどよりも低くなった声音に、健人は驚いてツバサを見た。煩いと言っていただけあって、ツバサは歩のことが嫌いなんだろうか。
「お前ら、仲悪いの?」
何気ない伲鼏枻坤盲郡韦ⅳ饯欷趣庖鈬恧筏皮饯螭胜长趣蚵劋い皮郡韦戏证椁胜ぁ¥堡欷伞ⅳ饯钨|問に対して二人は答えられなかった。仲が悪いとは言えないけれど、良いとも言えない。互いに微妙な関係であることは、分かっていたようだ。健人は気まずそうに、歩を見る。歩もまた健人と同じ顔をしていた。
「別に⒅賽櫎蠠oいよ。ね、健人?」
ちょっとだけ間を置いてから返事をした歩に「う、うん」と健人も返事をする。それから歩は困ったように笑っていたが、ツバサはジッと見つめたまま、表情を変えなかった。
「へぇ。そうなんだ。あんまり、仲良い風には見えなかったけど」
そう言うとツバサは立ち上がって、歩を少しだけ見つめると健人に目を向けた。
「次会うとしたら、学校だな。じゃあな」
ツバサは健人にだけそう言い、歩には何も言わずに公園から立ち去ってしまった。あからさまな態度に、健人も歩も反応することが出来ず、健人は座ったままの状態でツバサが公園から出て行くのを見送っていた。ツバサの姿が見えなくなり、健人は恐る恐る歩に視線を移す。
「なんか、話してたの?」
「……え?」
いきなりそんなことを聞かれて、健人は何を尋ね?
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