《好き≠恋(日文版)》第36章


「でも、母さんとか、義父さんには……、冷たく出来なかった。育ててもらってるからとか、家に住まわせてもらってるから、冷たい態度を取っちゃいけないと思って、出来るだけ普通に振る舞ってた。だけど、お前は……、歩なら嫌っても良いんじゃないかって、歩を嫌ってることで俺は自分を保ってただけなんだ……。謝って済まされる事じゃないって言うのは分かってる。勝手に嫌いって決めつけて、突っぱねて、優しくしようとしてくれてたのを最初から拒んで……。だから、俺はお前に嫌われても仕方ないんだ。嫌われるようなことを、ずっとしてきたんだから」
健人の表情が苦渋に滲んで、目を瞑る。今まで泣いてこなかったせいか、泣こうと思っても涙なんて出てこなかった。泣いて、許される事ではない。泣いても、同情を引くだけだと分かっていても、今は泣きたいと思った。
「謝っても許されないことぐらい分かってる。優しくしてくれたことだって、今になってようやくありがたいと思った。でも、今頃気付くなんて、俺は本当に最低で、どうしようもない奴で……。自分のことしか考えてない、凄く弱い奴なんだ。だから……、嫌いなら嫌いではっきり言ってくれ。じゃないと、俺、分からないから。言ってくれないと、深読みなんか出来ないから、分からない……」
崩れるように蹲った健人に釣られて、歩も一緒にしゃがんでしまう。掴まれている手がとても温かいのに、ク椹‘が効いているせいか、とても寒く感じた。何も言ってこない歩に、健人は少しだけ悲しさを覚えた。
数秒間、沈黙する。啜り泣く様な息遣いが聞こえて、歩は健人を見つめた。
「……健人」
名前を呼ぶと、ハッとしたように顔を上げて、健人は歩を見つめる。まっすぐ歩の目を見つめる健人は、不安げで苦しそうだ。こんな時こそ、泣いてしまえば良いのに、健人は泣けずに苦しんでいるようだった。
「健人は俺のこと、どう思ってるの? 嫌い? 好き?」
優しく尋ねられて、健人は唇をかみしめた。好きか、嫌いか、その二択なら健人はすぐに選ぶことが出来る。出来るはずなのに、言葉が出てこなかった。好きと言って、歩に拒否されたらどうしよう。そんな考えが過ぎって、答えることが出来ない。
「……俺は」
一言、だ。たったの2文字を言うだけなのに、こんなにも出ないとは思わなかった。口が渇いて、喉が痛い。フロ辚螗挨尉@ぎ目を見つめて、健人は息を吸った。
「健人のこと、好きだよ。俺は」
まず、頭に浮かんだのは、空耳かどうか、だった。言葉が頭の中に流れてきたとき、それを情報として捉えることが出来なかった。顔を上げて、先ほど吸った息を吐きだした。言葉と一緒に吐き出す予定だったのに、予定とは全然摺ρ匀~が声として出てきた。
「……え」
吐き出した息を共に出てきた戸惑いの声に、歩は困ったように笑った。
「だから、健人が俺のこと、どう思ってるか気になる。今は、嫌われて無いってことで、良いんだよね」
何でも許してくれるような笑顔を向けられて、健人は何も答えることが出来なかった。ひたすら、何度も頷いているうちに、目から何かが零れてくるのが分かった。パタパタとフロ辚螗挨怂韦浃沥郡长趣恰⑵い皮い毪韦坤葰莞钉い俊?br /> 「健人は最低な奴じゃない」
そこだけはどうしても否定したくて、少し強い口眨菤iは言う。
「でも、俺はっ……」
「最低な奴じゃない」
もう一度、今度は強い口眨茄预铯欷啤⒔∪摔峡冥颏膜挨螭馈W畹亭坤人激盲皮い毪韦恕iがそれを認めさせないと何度も言い返される気がした。こんなにも良い奴だと言うのに、どうして嫌ったんだろうかと、昔の自分が憎くなった。健人は優しく髪の毛を撫でる歩を見つめた。
「無理してる、わけじゃないんだな」
「無理なんかしてないよ。健人が思ってるほど、俺は器用な奴じゃないし、嫌いな奴と話しあったりしようとも思わない。…………それに、健人が思ってるより、俺は優しい奴なんかじゃないよ」
歩は健人の腕を取って、立ちあがらせた。目を逸らさず、見つめている健人を見下ろして、少しだけ微笑む。健人の想いを聞けて、すっとした。今まで嫌われていた理由も分かって、肩の荷が降りた。何が原因で二人の関係をこじらせていたのか分かって、すっきりとする。
「俺が可哀想だからじゃ……」
「そんなんで優しくしてると思ったの? 確かに、可哀想だと思ったことはあるよ。雷に怯えてる時とか、ちょっと思ったかも。でも、それだけで優しくしてやれるほど、俺は出来た人間じゃないし。本気で健人のこと嫌いだったら、雷鳴ってて怯えてるのを見ても、絶対に無視してた。一人で怯えてれば良いと思ってる。でも、俺は放っておけなかったんだ。健人が一人でガタガタ震えてるの見たら、抱き締めずには居られなかった。一人じゃないって、健人に教えてあげたかった」
健人の腕を取っている歩の手が、少し震えているように感じた。健人は手に目を移して震えているのを見て、歩に目を移す。寒いわけでもないのに、どうして手が震えているのか、分からなかった。
「ジンは、健人のことを可哀想だって言ってた。俺だって可哀想だと思ったのに、可哀想なんて同情するなって思ったんだ。すげⅴ啷膜い俊=∪摔戎倭激─盲皮毳弗笠姢皮郡椤ⅴ弗螭啶啷膜い啤⒃绀∪摔橐悉丹胜悚盲扑激盲俊A证仍挙筏皮霑rもそうかな。健人が誰かと楽しそうに喋ってるとさ、イライラしてる自分がいるの。俺さ、すげ黄饔盲坤椤ⅳ饯ρ预Δ坞Lせなくて……。でも、健人にこんなこと言えないし、一人で空回ってた。だから、凄く健人には迷惑かけたよね。ごめんね……」
掴んでいる手が離れそうになり、健人はその手を掴み返した。その手が離れて行くことが、何よりも辛い。歩の手を握って、健人は顔上げる。
「同情されるのは、好きじゃない。むしろ、嫌いだ。可哀想だなんて思われたくない。歩にも……、同情されたくないと思った。でも、優しくしてくれるなら同情でも良いと思ったんだ。俺のことを考えてくれるなら、同情でも何でもよかった……」
「……同情なんか、してないよ。可哀想って思ったら、同情なんか通り越しちゃったんだよ」
呆れたように笑っている歩を見て、健人は首を傾げた。言っていることの意味が、よく分からなかった。
「……どう、いう……」
尋ねる前に健人は手を引っ張り上げられ、つま先立ちになる。いきなり、引きあげられたことに驚いて歩を見ると、歩の顔が目前にまで近づいていた。唇に何か暖かいものが触れて、すぐに離れた。
引きあげられた手がそっと離れて、足に地面が付いた。
健人は顔を見上げたまま、固まっていた。
「同情通り越して、好きになった。さっきも言ったと思うけど、健人のこと好きだよ。俺は」
もう一度はっきりと言われ、健人は唖然としたまま、歩を見上げていた。
この好きの意味が、普通の好きとは摺Δ取o理やり思い知らされた。それもまた、脳が情報を拒絶し、理解しようとする前に思考回路が停止してしまった。
「健人のこと、好きだよ」
この言葉を聞いたのは、二度目だった。一度目のときは、冗談を言っているような、からかわれている気がして間に受けていなかった。けど、今は摺Αiの目は真剣で、挙句の果てには唇まで合わせてきた。それが何を意味しているのか、言われなくても分かっていた。ただ、信じられない。それだけだった。
「……ごめん」
歩の指が、健人の唇に触れる。そこでようやく思考が現実に戻ってきた健人は、触れられた衝撃で体を引かせてしまった。嫌だっ?
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